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考える言葉

ゴム紐

2018年12月03日

 書棚の整理は、楽しい。以前に感銘し、影響を受けた書物に再会できるからだ。

 今回は、『「般若心経」生き方のヒント』(ひろさちや著)という本に目が止まり、ぱらぱらとめくっていると、次の言葉に心が惹かれて、再読が始まった。

 「人間の物差しは"ゴム紐"だ」・・・・・。

 「物差し」とは、価値観(=思考の枠組み)と置き換えてもいいだろう。「人間はそれぞれ自分独自の、自分勝手な、そのときの気分に左右される物差しでもって、物事をみている」のだという。

 つまり、勝手に伸び縮みする"ゴム紐"のような物差しでものを測っているのが、私たち人間であると・・・。「同じ物が、人が違うと違って見える。同じ人でも、気分が違うと違って見える」 そんなあやふやな物差しを信じて生きているのが、私たち人間であると・・・。

 じゃ、「ゴム紐の物差し」を「プラスチックの物差し」に変えればいいという話なのかというと、著者はそう簡単な話ではないという。人間は、「ゴム紐の物差し」しか持てないのだという。なぜか?際限のない欲望(=渇愛)こそが人間の本質であるから・・・。

 では、どうしたらいいのだろうか?

 先ず大事なのは、① 自分が身につけている物差し(=価値観)は、後生大事にしているが「ゴム紐の物差し」であって、あやふやなものであるということを自覚することである。そして、その次に大事なのは、② その物差しをどのように使えば、幸福になれるのだろうか、を考えることだ。

 物差しを価値観と置き換えてみると、その糸口がみえてきそうな気がする。

 まず、私たちが身につけている価値観が"ゴム紐"のように伸び縮みするのであれば、その価値基準(判断軸)は不安定で当てにならないということになる。それを解決するためには、独善的(独りよがり、身勝手、自己中心的)にならないこと・・・。社会的絶対性(真・善・美)をつねに意識し、自己反省を日々するように心掛ける。

 さらに、価値観には位相差(レベルの違い)があるという。経営人間学では、レベルの低い価値観のことを分離思考の価値観(自他分離)といい、レベルの高い価値観を統合思考の価値観(自他非分離)として教えている。

 価値観の位相(レベル)を高めることによって、私たちは独りよがりな判断や他との優劣で物事を見るような不安定さから解放されるという。

 「世のため人のために尽くすことが自らの幸福である」と考えることができるようになれば、"ゴム紐"の物差しも安定的な使い方ができるようになるのでないだろうか。

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