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考える言葉

角度

2015年09月01日

 アルバムを眺めていると、その人の魅力的な表情を瞬間にとらえているような一枚の写真に出逢うときがある。実に絶妙なシャッターチャンスだと思うと同時に、アングルというか、捉える"角度"がいい・・・。
 プロのカメラマンの特徴は"角度"の捉え方にあるというが、私たちの人生や経営においても、"角度"の捉え方によって思考や行動が大きく変わる。
 例えば、会計学を実務に活かすときもそうである。どのような"角度"で会計学を見るかによって活かし方が変わってくる。つまり、税務署への申告を目的とした会計と、経営者の意思決定のサポートを目的とした会計では、会計システムの構築や処理の仕方が変わってきても当然である。
 「会計がわからんで経営ができるのか」というフレーズで有名でもある『稲盛和夫の実学~経営と会計』という本の中で、氏が次のようなエピソードを述べている。
 自分が経営の立場から予想したものと実際の決算の数字とが食い違うので、「それは、なぜか?」と問うが、「会計的にはこうなる」という教科書的な返事しか戻ってこない。「6年でダメになる機械を法定耐用年数の12年で償却費計上するのか?」「儲かっているのに、税金や配当を支払うのに借金をするという。儲かったお金はどこにあるのか?」 経営の基本にしっかりと寄り添ってこそ会計の本質ではないかと・・・。
 さすがである。「売上を最大に、経費を最小に」「値決めは経営である」「土俵の真ん中で勝負をする」「勘定合って銭足らず」などの考え方をベース、"角度"にして、経営に役立つ京セラの管理会計システムを構築していったのである。
 人生も同じだと思う・・・。「人生は出逢いである」といわれるが、どのような"角度"で出逢うのかによって、その後の関係性のありようが大きく変わってしまうという経験を多かれ少なかれ、持っているのではなかろうか?
 社内でも起こる人間関係の軋轢・・・。どんなに嫌な相手、その人にも愛し合う家族があり、友人の輪がある。ちょっと"角度"を変えてみると、その人のいい所が見えてきそうな気がする。
 職場という組織(全体)は、それを構成しているメンバー(部分)の集合体である。部分と部分との関わりという"角度"だけに執着してしまうと、食い違いばかりが目に付いてしまう。だが、全体という"角度"からお互いの関係性を見直してみると、何かもっと大きな計らいがあっての出逢いを感じることができるのではないだろうか。
 「人間は一本の葦にすぎない。・・・だが、それは考える葦である」 有名なパスカルの言葉である。捉われず、いろいろな"角度"から考えていきたい。

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