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考える言葉

大愚

2017年05月08日

 最近、妙な習慣がついたようだ・・・。書棚を眺めていると、不思議と目に留まる本が出てきて、手に取り、読み始めている。最初は、パラパラとめくりながら、「こんな本があったな・・・」と思いつつ、流し読みをしているのだが、いつの間にか、はまっている。

 連休中に、はまってしまったのが『大愚のすすめ』(山田恵諦 著)だ。熟読しているうちに、いつ頃購入した本だったかが、気になって調べてみると、1991年7月30日初版発行とあるから、25年ほど前のことである。

 時代は20世紀の終盤あたりで、世の中が日本のバブルに気づき始めた頃だろう。小賢しく知識を詰め込み、経済に偏重し過ぎた日本の将来を憂えている・・・。「世の中の誰も彼もが、少しでも利口になろうとあくせくしている。利口でなきゃ損をするから、勉強するのだと、どうにもせせこましい」と。

 「手段にすぎないものを目的化し、真の目的を見失っている日本・・・。経済的に豊かになった日本は、豊かさの中にあぐらをかいているのではなく、助け合う心・分け合う性格をつくり、恩を返して、世界のための日本となるべきだ」と説いてある。

 そのために必要なことは、"大愚"になることだという。元は、伝教大師最澄の次の言葉からだという。

 「色々と学び、励んでみたけれど、自分は知恵も才能もない最低の人間だ。ならば、これまでしてきたことは全て流し去って、生まれたままの自分になってみよう。愚の中の極愚に徹してみよう」

 賢くなろう、利口になろうと、あくせくするのではなく、愚になること。力を抜いて、とことん愚かなじぶんというものを見つめてみる。一から出直す決意である。「愚の中の極愚」、つまり"大愚"とは、自分をまず最低の位置に置いてみることだという。

 そうすると、そこから眺める世界というものは、上から見るのとはえらい違いがあることに気づかされる。山川草木(=自然)のすべてが先生となり、真実というものを教えてくれるのだという。

 その真実とは何か?自分以外のすべての環境に支えられている自分がいることに気づかされることだと思う。つまり、「自分は生かされている!」という真実である。最近だが、そのことが腑に落ちてきている自分に気づかされる。

 以前よりずっと、家族をはじめ、身近な人たちに、自ずと感謝の念を持てるようになっている。すると、不思議と肩の力が抜けて、素直で穏やかな自分になれる。どんな些細なことにでも面倒くさがらず、自然と体が動くのである。

 恐らく、仕事をご縁にいい出逢いをいっぱいさせてもらっているのだと思う。感謝!

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