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考える言葉

自己欺瞞

2015年02月23日

 東京駅の本屋で何気なく手にした一冊の本、『自分の小さな「箱」から脱出する方法』(アービンジャー・インスティチュート 著)を紹介したい。
 第1刷発行(2006年11月5日)だから、ロングセラーとなっている、アメリカで書かれた物語形式の啓発書である。「何気なく・・・」と書いたが、恐らく 「人間関係のパターンを変えれば、うまくいく!」というサブタイトルに惹かれたのだろう。
 「箱」とは、"自己欺瞞"(Self‐Deception)のことである。
 「人は、自分の感情(他の人のために貢献したいと思う良心)に背いたときに、自分への裏切りを正当化するために、「箱」に入る。すなわち、"自己欺瞞"に陥る・・・。そうすると、周りの世界を自分を正当化する視点で見るようになるから、現実を見る目が歪められるようになる。つまり、自分自身の問題に気づかなくなり、すべてを他人のせいだと考えてしまう。
 人は、箱に入ってしまうと、その自分を正当化するために、他人の粗探しばかりするようになり、周りの人たちまでも箱の中に入るようにしむけてしまい、互いに自分を正当化する集団へと化してしまう。そして、共謀して、互いに箱の中にいる口実を与え合うようになる・・・」
 ざっと、こんなストーリーである。"自己欺瞞"の恐ろしさは、感染するところにある。
 こんな人間関係の組織で生産的な行為がなされるはずもない。生産性の向上を期待するどころか、まさに、組織存亡の危機である。
 稲盛和夫氏は、かなり以前から「仕事の成果=考え方×能力×熱意」であり、その中でも最も重要なのは、「考え方」だと示唆されている。能力や熱意の高低は、百かゼロであるが、「考え方」はプラスにもマイナスにも百になるから、危ないという。
 ここでいう「箱」とは、"自己欺瞞"というマイナスの「考え方」であり、その人の判断基準をなす価値観といえよう。
 "自己欺瞞"という価値観は、自分自身への裏切りを正当化するための道具としてしか、他人を扱おうとしないのであるから、良好な人間関係など築けるはずもないのである。マイナス効果で組織に打撃を与えること、必至である。
 どうすれば、この「箱」から脱出できるのだろうか・・・。
 いろいろと書いてあるが、一言でいうと『経営人間学講座』で学ぶ、自他非分離の思考(自分と他人を分離しないという考え方)、つまり統合の価値観のことが書いてあるといえよう。
 "自己欺瞞"から脱却し、人間の本質に立ち返れ!ということだが・・・。

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